作曲三昧

作曲家十河陽一の日常、非日常日記。

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続・塔和子さんのこと

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kazenomai02
ずいぶん遅くなりましたが、2月18日の記事の続きです。

「塔和子さんのこと」をご参照ください。

何年か経ったある日、映画監督の宮崎信恵さんから突然の電話。
「塔和子さんのドキュメンタリー映画の撮影中、
あなたのKAZE NO HAというCDを偶然見つけて聴いた。
是非映画音楽を担当してほしい」ということでした。

期限まで一カ月、しかも私はその時、別の作品を作曲中で、
それが仕上がるまで最低二週間。
残り半月で仕上げなければMAに間に合わない。
しかも当時の私は映画音楽の経験は全くなく、
なにをどうしてよいのかも皆目分からない。

今考えてみれば頼む方も頼む方ですが、
引き受ける方はさらに無謀。
無謀と知りつつ二つ返事で引き受けた理由は、
ひとえに塔さんへの敬愛の念以外なかったのだと思います。

最初のシーンをビデオで初めて観た時のことは一生忘れないでしょう。
大写しになった塔さんの顔。
その映像の上に希望の火という詩が重なるのですが、
(吉永小百合さんの朗読はまだ収録前だったので、全くの無音状態)
その顔は、ハンセン病の後遺症で整っているとは言い難く、
希望の火の一節を借りれば「かけたところのあるからだ」ということになります。
しかし私はその表情を観た時、越え難い怨讐の念を乗り越えようとしている人の静かな神々しさを感じ、
また、塔さんと宮崎監督との並々ならぬ信頼関係を確信しました。
魂を揺さぶられたというのは、この時のような感覚をいうのでしょうか・・・。

私にできることは、不慣れな映画の背景音楽を意識的に書くことではなく、
塔さんの詩、そして塔さんという存在へのオマージュを音楽で表現すること。
私の心は決まりました。

実はこのことには後日談があります。
例の冒頭シーンの音楽を録音中に、宮崎さんからのダメ出し。
「ここのシーンの音楽なんとかならないかしら?」
私は、その音楽に確信を持っていた、というよりそれ以外の選択肢を持っていなかったので、
「これでいいんです」と答えました。
「どうして?」
「だって、塔さんは人間じゃないんです」
私がそう言った瞬間、宮崎さんの表情が変わるのがわかりました。そして殺気のような緊張感。
「だって、塔さんは神様なんですから」
私がそう続けると、ふっと緊張が解け、宮崎さんは「わかりました。じゃあこれでいきましょう」
とだけおっしゃって、それ以降、彼女からの音楽に対する注文は一切ありませんでした。

「風の舞」以降、映画はもちろん、もっと小さな映像を含むほとんどの宮崎作品の音楽を担当させてもらい、
言い方は悪いのですが、仕事をしながら少しづつ映像音楽の何たるかを勉強させてもらったと思っています。
今では、私を映画音楽専門の作曲家と思っている人もいらっしゃるくらいです。
しかしどれだけ経験を積んでも、新しい映画と初めて向き合う時に必ず思い出すのは、
「風の舞」の最初のシーン、そして、その映像に接した瞬間の私の心のありよう。
私にとっての、映画音楽制作の原点は、常にそこにあるのです。

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東京で大規模な塔和子展が開催中です。

2011年5月21日(土)~6月26(日)
東京国立ハンセン病資料館にて

関連イベントとして、
宮崎信恵監督作品、ドキュメンタリー映画「風の舞」も上映されます。
(吉永小百合さんが塔さんの詩を朗読しています)
※当日は宮崎監督の挨拶もある予定です。

日時 2011年6月11日(土)13:00~14:00
場所 国立ハンセン病資料館映像ホール

詳細はこちらです

ドキュメンタリー映画「風の舞」公式ホームページ

映画で吉永小百合さんが朗読された塔さんの詩の紹介

「風の舞」の音楽より

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